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書籍名 | : | 日常茶飯事 |
シリーズ | : | 単行本 |
著者 | : | 山本夏彦 |
初版発行 | : | 昭和37年 9月10日 〔1962年〕 |
紹介版 | : | 昭和37年10月10日 |
発行所 | : | 工作社 |
定価 | : | 320 |
頁 | : | 244 |
印刷所 | : | 東洋社印刷株式会社 |
装幀・挿画 | : | 深尾庄助 |
初出誌 | : | 「室内」に連載した短文に、旧作の二、三を加えたもの。 |
かいつまんで言う | : |
山本夏彦氏のコラム集では最初の単行本で工作社の出版。工作社とは山本夏彦氏が 創り、編集兼発行人だった出版社でインテリア雑誌「室内」を発行していた会社である。 その本を手にすると洗練され、研ぎ澄まされ、嫌味の無い美しさに驚く。しかし、残念ながら 平成18年3月号(bU15 平成18年2月28日発売)をもって、休刊中である。ただ、本人が 一流のコラムニストにも関わらず、工作社から出版した山本夏彦氏の本は、この本だけである。 文庫本「恋に似たもの 著者:山本夏彦 発行:中央公論 解説:小林信彦」には『「室内」と いう雑誌を何十年もつづけているもう一人の氏が凄いと思っている。そう思わない人は、雑誌 作りというものがどれほどむずかしいかを知らないのである。』とある。 さらに、本書の「あとがき」に『「室内」はデザインと工作の分野では、すでに一流の ジャーナリズムである。』と書くが、それは昭和37年の時の話しである。40年以上も前にその 世界で一流であり最後まで一流であった。 この本は探しても、本当に見つからない。この世に何冊あるのだろうか。 実際にこの単行本を手にとると、昭和37年発行とあって、本当に趣きある造りでありやはり 味わい深い。 目次の前に推輓文があり、そのメンバーも吉田洋一氏、飯沢匡氏、福田恆存氏であり、 その福田氏が「反時代的といふのは、私にとつても山本氏にとつても、一つの仮面に過ぎ ない。だが、山本氏の場合、この仮面の下にあるものは、大げさな言葉だが、「虚無の深淵」で はないか。」と述べておられる。この時、山本氏もそれほど有名ではなく次の単行本を出版する のに、5年を必要としているのである。流石「一流、一流を識る。」のであろう。そして、最後に 次の言葉で声援を送っている。「この出版を機会に、ひよつとすると「天才」かもしれぬ 山本氏が、それを縦横に発揮して、凡愚の虚を突き、世間を無明から救済する時の到らん 事を祈って止まない。」・・・・・。 内容は誠に痛烈であり、本書「あんぽんたん」には『単純明快なスローガンがあれば、人は これだけ興奮する。目をきらきらさせ、口角あわをとばす。だが、いくら威勢がよくても、蟻は やっぱり蟻である。』と書き驚かす。ここで投げ出す人がいる。それでも書く。 また、本書「この国」で夏彦氏6年坊主から一両年たったころ『私は、彼らを国語の破壊者と みた。そして、年長者の多くが、巻頭論文の愛読者であるのをみて、驚くと共に、二十年後は 彼らの天下で、国語はすべて巻頭論文の如くなろう、私はそれに抵抗する最後の一人になる かもしれぬと覚悟した。』と綴る。そして、その覚悟は残念ながら覚悟以上のものとなり、今は このざまの日本語である。 そして、本書「自ろう車」では『電気のつく時代は、つかない時代を憐れむようだ。電気は 行燈の十倍明るいという。それなら現代人は古人より十倍幸せか。』と夏彦氏永遠のテーマが 顔を出す。内容ずっしりなのである。 |
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シリーズ | : | 中公文庫 |
初版発行 | : | 昭和五十三年四月十日 〔1978年〕 |
紹介版 | : | 昭和五十四年六月二十五日 再版 |
発行者 | : | 高梨 茂 |
発行所 | : | 中央公論社 |
番号 | : | 1195-690090-4622 |
定価 | : | 280 |
頁 | : | 232 |
製版印刷 | : | 三晃印刷 |
カバー | : | トープロ |
製本 | : | 小泉製本 |
カバー装画 | : | 早坂 信 |
初出誌 | : | 昭和37年10月 工作社刊 |
解説 | : | 外山滋比古 |
かいつまんで言う | : |
外山滋比古氏が「解説」に山本夏彦氏が『「著者の出自、経歴はむしろ知らないほうがいい」 と考える。「それは著書の鑑賞のさまたげになる」と信じているからだ。』と書いているが、確かに 山本氏のコラムには乾いたところがある。ただ、本書「鴛鴦」に寝ている妻を『ただ、ここに長々 と横たわれるもの、そもそもこれは何ものであろうと、懐疑の念にかられる。』とあり、また『わが 細君は、わが綴方だけは読まない。』とある。 ただ、いくら読まなかったとしても、この書き方は不思議である。そして、妖しい感覚に陥らせ る名コラムのひとつではある。 裏カバーに『一度読んだらやめられない味わいをもつ。』とあるが、本サイトの編集兼発行人 もやめられないまま、30年。思えば遠くまできたものだ。 |
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シリーズ | : | 新潮文庫 |
初版発行 | : | 平成十五年八月一日 〔2003年〕 |
紹介版 | : | 平成十五年八月一日 初版 |
発行者 | : | 佐藤隆信 |
発行所 | : | 株式会社 新潮社 |
ISBN | : | 4-10-135016-7 C0195 |
定価 | : | 438 |
頁 | : | 265 |
印刷 | : | 三晃印刷株式会社 |
カバー印刷 | : | 錦明印刷 |
製本 | : | 株式会社植木製本所 |
カバー装幀・装画 | : | 唐仁原教久 |
デザイン | : | 野田あい |
初出誌 | : | 昭和三十七年工作社より刊行。同五十三年四月中公文庫に収録。 |
解説 | : | 鹿島 茂 |
かいつまんで言う | : |
中公文庫よりも活字ポイントが大きく読みやすくなっている。出版社は違うが、同じ本で33 ページも多い。 鹿島 茂氏が「解説」に山本夏彦氏は『四十年前から死の直前まで全然変わらなかった、 というよりも、まったく同じだったということ。』と書くが、確かにこの本にあることは最後まであり、 最後まであったものはこの本にある。 裏カバーの『すでにして名人だった技とキレ』を味わうことができる。 |
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