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書籍名 | : | 茶の間の正義 |
シリーズ | : | 単行本 |
著者 | : | 山本夏彦 |
初版発行 | : | 昭和四二年一一月五日 〔1967年〕 |
紹介版 | : | 昭和四二年一一月五日 第一刷 |
発行者 | : | 上林吾郎 |
発行所 | : | 株式会社 文藝春秋 |
定価 | : | 550 |
頁 | : | 286 |
印刷 | : | 大日本印刷 |
製本 | : | 中島製本 |
装本 | : | 花森安治 |
初出誌 | : | 「室内」−『日常茶飯事』? |
かいつまんで言う | : |
山本夏彦氏コラム集2冊目。早くも株式会社文藝春秋より出版。 単行本は文藝春秋で文庫本化は中央公論社。改版も中央公論新社。 中央公論社は、戦前に山本氏の翻訳した「年を経た鰐の話」を「中央公論」に掲載した 会社で、初期の山本氏の単行本は「日常茶飯事」から「意地悪は死なず」まで、新潮社の 分を除くと文庫本化している。ただ不思議なことに同社からは山本氏の単行本の出版はない。 装本が花森安治氏であり、非常にモダンでお洒落である。時代を超えている。 この本も探してもなかなか無い。この頃は山本氏もそれ程有名ではなかったはずで、 刷られた数も限られているのだろう。 とにかく鋭く、面白い。「人か犬か 犬の振りみてわが振りなおせ」が絶品で『人は隣人の 悲運を喜ぶ。愁傷のふりをして、いそいそとかけつけ、家の中を見回して、昨日に変る零落 ぶりをひそかに喜ぶ。こんな喜びを犬は喜ばない。』と書き放つ。これだけで、身につまされる が、この調子がリズム良く延々と続く。 強烈なファンになる人が付くと同時に、『猫またぎ』となる人も出るだろうと十分予想できる 出来である。しかし、「ご贔屓 その一 私ごときものにも贔屓がある」で『どんな作者も、 ほんとは百人の読者しか持たないのではないかと私は疑っている。オレにはなん万の読者が ついているぞと威張る作者もあるが、それは誤解か、版元に対するデモにすぎない』と覚めた 目で自分をも突き放す。 また、「繁栄天国というけれど」では山本氏の現代に対す警鐘深く『買うものが、追いかけて、 追いぬいて、際限がない。ひと通り揃えて安心するわけにいかないのが、この極楽の特色で ある。人はとこしなえに飢え、餓え、ついに満足することがない。心はいつも貧乏だ』と畳み 掛け、最後に『昼をあざむく不夜城とは、古人のつたない文学的表現だった。それをまに うけて、現実化したのが運のつきである。何用あって、昼をあざむくか。』とも言う。きついと いえばきつい。 「世代の違いと言うなかれ」などもわかりやすく面白い。 本書の帯に『愛想笑い、嘘っぱちの涙、おざなりの驚きを重ねながら、偉大な遺産を喰い 潰している日本の社会を批判する』とあるが、昭和42年の発行本にして〔偉大な遺産を喰い 潰している日本の社会〕とあるのである。いつの時代も遺産を喰い潰しているという捉え方が あるのか、本当に偉大な遺産を喰い潰しているのか。 正に偉大な遺産を喰い潰しているのであれば、随分喰い潰したものであろう。 |
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シリーズ | : | 中公文庫 |
初版発行 | : | 昭和五十四年二月十日 〔1979年〕 |
紹介版 | : | 昭和五十四年四月五日 再版 |
発行者 | : | 高梨 茂 |
発行所 | : | 中央公論社 |
番号 | : | 1195-69012123-4622 |
定価 | : | 320 |
頁 | : | 271 |
製版印刷 | : | 三晃印刷 |
カバー | : | トープロ |
製本 | : | 小泉製本 |
カバー | : | 早坂 信 |
初出誌 | : | 昭和四十二年 文藝春秋刊 |
解説 | : | 河盛好蔵 |
かいつまんで言う | : |
本書は絶版であるが、2003年に中央公論新社より改版が出版されまた新しい読者が増え たら喜ばしいことである。河盛好蔵氏が「解説」に『しかし邪念を去って耳を傾けるとき、これ ほど心にしみる頼もしい声も少ない。』と褒めているが、まだ読んでない人もこの『邪念を 去って』一度読んでみてもらいたいものである。 |
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シリーズ | : | 中公文庫 改版 |
改版発行 | : | 2003年8月25日 〔平成15年〕 |
紹介版 | : | 2003年8月25日 初版 |
発行者 | : | 中村 仁 |
発行所 | : | 中央公論新社 |
ISBN | : | 4-12-204248-8 C1195 |
定価 | : | 590 |
頁 | : | 314 |
印刷所 | : | 三晃印刷 |
製本所 | : | 小泉製本 |
カバー画 | : | 前田昌良「褐色の街」(1999年、油彩) |
カバー | : | 中央公論新社デザイン室 |
初出誌 | : | 一九六七年十一月 文藝春秋刊 |
解説 | : | 山崎陽子(童話作家・ミュージカル脚本家) |
かいつまんで言う | : |
改版となり、活字ポイントが大きくなり、行間も広くなって読みやすくなっている。 改版は同じ出版社の同じ本でも43頁も多い。山本氏が亡くなられた後に出版されたので、 山崎陽子さんが解説「笑いつづけて十四年」に『二十三日のご逝去だとニュースは伝えて いた。足は震え、息が出来なかった。葛湯の袋が目に入ったとたん、どっと涙があふれた。』と 書き、読む者も切なくさせる。 しかし、こうして「茶の間の正義」が普通に読めるようになり快挙である。 |
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