誰か「戦前」を知らないか
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書籍名 誰か「戦前」を知らないか―夏彦迷惑問答
シリーズ 文春新書
著者 山本夏彦
初版発行 平成11年10月20日 〔1999年〕
紹介版 平成11年12月10日 第3刷
発行者 白川浩司
発行所 株式会社 文藝春秋
ISBN 4-16-660064-8
定価 690
238
印刷所 理想社
付物印刷 大日本印刷
製本所 大口製本
装幀 坂田政則
カット 浜野孝典
初出誌 『室内』
かいつまんで言う  「室内」連載の半分。「『室内』40年」と同様な形式の問答集。
 文春新書シリーズ3冊の第1冊目。後2冊は「百年分を一時間で」と「男女の仲」。
 新書なので文庫本もなし。
 山本氏の「戦前」に対する拘りは尋常ではなく、『「戦前」という時代』という本も出版している。
その辺のいきさつを本書「大正(ご遠慮)デモクラシー」では『戦後五十年という歳月は互いに
理解を絶した歳月だと分りました。』と語り、更に『あなた方に「戦前」を話して理解が得られない
のは、ひとえに言葉が滅びたからです。それは核家族が完了したからです。教育のせいです。』
となり、やはり言葉の話しとなる。現実に言葉が通じないのである。それはもう戦前とか戦後の
レベルを越え果てしない断絶である。
 そして、それは明治、江戸時代にも遡り、江戸時代はまっ暗だったのかの問いに『明治に
生まれた人はそう思いたい。島崎さんはそれにつけこんで「夜明け前」と題した。ジャーナリスト
の才があるといわなければならない。維新政府は江戸時代がまっ暗だったと思わせなければ
ならない。洋の東西を問わず新政権は旧政権を悪くいう。ただ、今回の戦前戦中まっ暗史観は
これとはちと違う。』と云い、それがこの本の、山本氏のテーマである。
 そうして、現代の日本は『死んでいく老人を隔離しようとしているくらいだから、すでに死んだ人
とはてんで交際がない。ぼくはよく死んだ人と話をする。本来生きている人と死んだ人は区別
すべきじゃない。なのに今は区別しすぎる。イナゴの大群のくせに(笑)』と結び、一匹のイナゴは
行き場を失うのである。
 問答しても、本にしても結局は「同じことを言う」であるが、対話の形にすると、また別の面白み
が加わり、楽しめる本である。
 当然のことであるが、帯の『大地震の前の晩だって人は枕を高くして寝ていた。』のであり、
今晩の枕も低くはないのであるが大丈夫かな。
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