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書籍名 | : | 完本 文語文 |
シリーズ | : | 単行本 |
著者 | : | 山本夏彦 |
初版発行 | : | 平成十二年五月二十日 〔2000年〕 |
紹介版 | : | 平成十三年二月二十五日 第七刷 |
発行者 | : | 平尾隆弘 |
発行所 | : | 株式会社 文藝春秋 |
ISBN | : | 4-16-356230-3 |
定価 | : | 1,524 |
頁 | : | 366 |
本文印刷 | : | 理想社 |
付物印刷 | : | 凸版印刷 |
製本所 | : | 中島製本 |
装幀 | : | 多田 進 |
装画 | : | 藤島武二「蝶」(一九〇四) |
初出 | : | 『文藝春秋』『諸君!』発表年代は広範囲 |
V 明治の語彙 『諸君!』59.11〜60.6 「『戦前』という 時代」から再録 | ||
かいつまんで言う | : |
文語文について書いたものをまとめ、文語と口語に少しでもふれたものは旧稿も収録。 少し懐かしく、沢山難しく、多いに愉しく、半分は教養が付いていかないが、上品であり別格の 本であろう。この本は今読まなくとも、読めなくとも、所有するに値する本である。 帯にある通り『祖国とは国語である』であり『日本人は文語文を捨てて何を失ったか』を問い、 しかも面白い。例えば、本書「言い回しのほう」では『三十になっても雪之丞変化をヘンカという ものがあったが、誰も直してくれない。このたぐいを冷笑してくれるのは昔は中学生だった。 「オイあいつ雪之丞へんかだとさ」。人は笑われておぼえることがあるのである。親が子を笑う のである、中学生が中学生を笑うのである、その程度のことで傷つくのなら傷つくがいい。』と 小気味いい。 『原則として私は耳で聞いて分らない言葉は書かないと言ったら、お言葉ですがしばしば目で 見ても分らない字句がありますと四十半ばの紳士に言われた。私ごときが使う字句が読めない のは読めないほうが悪いと以前は内心思っていたが、このごろは待てよと考えなおすように なった。』と本書「わが語彙」に書くが、現実として分らないのである。 それが、山本氏が憂いているものであるが、もう返れない。それは「明治の語彙」にも『歳を とればとるほど上達すると思うのは思いたいのである。歳月は勝手に来て勝手に去る。老人に なればそれだけえらくなれるなら日本中えらい人で満員になるはずである。』と突き放し、最後 に『語彙の背後には千年の伝統がある。私は文語に返れと言っているのではない。今さら返れ もしない。早くすでに核家族である。私たちは風流という言葉を口にしなくなって久しい。古人は その短をすて長をとれと言っている。』と衝く。 回復の見込みを示さない今を「あとがき」に『藤村詩集はあんなに読まれたのに口語自由詩に なって以来詩は全く読者を失った、読者を失うと詩は難解になる。純文学も読者を失うと同時に 難解になった。だから文語に帰れというのではない。そんなことは出来はしない。出来ることは 何々ぞと私はひとり問うているのである。』であり、続いて『口で語って耳で分るのが言葉である。 文字は言葉の影法師だと古人は言った。もう一つリズムのない文は文ではない。朗誦できない 詩は詩ではない。語彙の貧困を言うものはあっても、言い回しの滅びたのを惜しむものはない。 「そんなにいやなら勝手にお仕」。』。 |
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シリーズ | : | 文春文庫 |
初版発行 | : | 2003年3月10日 〔平成15年〕 |
紹介版 | : | 2003年3月10日 第1刷 |
発行者 | : | 白川浩司 |
発行所 | : | 株式会社 文藝春秋 |
ISBN | : | 4-16-735216-8 |
定価 | : | 562 |
頁 | : | 334 |
印刷 | : | 凸版印刷 |
製本 | : | 加藤製本 |
装画 | : | 藤島武二 |
カバー | : | 多田 進 |
単行本 | : | 文藝春秋 二000年五月刊 |
解説 | : | 徳岡孝夫 |
かいつまんで言う | : |
山本氏の文春文庫18冊の内、17冊目。もう後1冊なのである。 解説は徳岡孝夫氏である。とにかく徳岡氏の文は心暖かく、熱気で熱い。 全て好いが、本書と「『男女の仲』 発行所:文藝春秋」の解説はお勧めである。 特に、本書「解説」の『夏彦翁の没後、同じような文にも人にも会わない。毎月の諸雑誌を繰り ながら、私はメートル原器を失った測量技師になった心地がする。恃む尺度を失ったと感じる。 生前の翁に払った畏敬の念が、いっそう深くなる。』は山本氏の愛読者が感じていたものを、 これ以上なく見事に言い表してくれた名文である。 残念ながら、本は何時でも何時までも買えるものではありません。 |
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