私の岩波物語
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書籍名 私の岩波物語
シリーズ 単行本
著者 山本夏彦
初版発行 平成六年五月十五日 〔1994年〕
紹介版 平成六年六月一日 第二刷
発行者 堤 堯
発行所 株式会社 文藝春秋
ISBN 4-16-348520-1
定価 1,700
379
本文印刷 理想社
付物印刷 凸版印刷
製本所 中嶋製本
装幀 多田 進
カバー装画 三岸節子「室内」(ヒマヤラ美術館蔵)
カバースケッチ 三岸節子
初出 『室内』 昭和六十二年一月号〜平成五年四月号
かいつまんで言う  『室内』に連載したものをまとめたもの。
 文藝春秋の「諸君!」「文藝春秋」「室内」などの連載を纏めたシリーズは『装幀:坂田政則
カバーイラス:川田憲一または川田 徹』でありこの本はこれらとは別のものとしている。文藝
春秋の出版であるが「室内」としての矜持なのだろうか。
 本書は帯にある「岩波書店を論じて完膚なし!」であるが、流石に本全てが岩波書店を
扱っている訳ではなく、23章の最初の一章であり、他は同「実感的「言論と出版の百年」」と
なっており、更に巻末の「主要人物・社名等索引」が詳しく、そちらに興味あればより楽し
める。
 本や出版だけでなく、広告代理店の話題もあり本書「電通以前にさかのぼる」では昭和の
初めには温室栽培が出始めたことに『人はつまらぬ努力をして一生を終わるものだと、ビア
ホールで冷凍の枝豆を口にしながら思ったことがある。だからよせと言うのではない。ひと
たび出来てしまったものは出来ない昔にかえれない。これが鉄則である。そんなことは誰でも
知っている。』と醒めた眼の社会諷刺がきつい。
 「原稿料・画料小史」には原稿料について詳細に書き興味深いが、最後のほうで山本氏も
『迎合するとみせかけて、自分の言いぶんを通そうとするのが私にとっての言論だとすれば、
レトリックの秘術をつくさなければならない。読者ははじめそれにだまされるが、次第に顔色を
かえる。飴をしゃぶらせて熊の胆をのませようとするのだなと感づくのである。』と真理をつき
つつ面白いことを書く。ただ、熊の胆はとても苦いが体にいいと云われるから、論理の反転の
反転の反転なのか。
 向田邦子の話題はよく出てくるが本書にもあり、「『室内』の才能たち」に向田さんのことを
『この対談は昭和五十六年一月号だから彼女が不慮の死をとげる八カ月前である。生きて
いるうちにほめておいてよかった。それまでも私は二、三度ほめている。けれどもそれらは
ことのついでに触れただけである。この時は四ページまるごとほめたのである。しかもデュー
したときすでに名人だとまで言っている。間にあってよかった。』と述べ素直な賛辞がすが
すがしい。
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シリーズ 文春文庫
初版発行 1997年5月10日 〔平成9年〕
紹介版 2004年9月15日 第3刷
発行者 庄野音比古
発行所 株式会社 文藝春秋
ISBN 4-16-735211-7
定価 590
403
印刷 凸版印刷
製本 加藤製本
カバー画 三岸節子「室内」(ヒマヤラ美術館蔵)
デザイン 多田 進
単行本 一九九四年四月小社刊
解説 久世光彦
かいつまんで言う  山本夏彦氏の文春文庫18冊の内、12冊目。
 この頃の本になると、ある程度人気が高いと思われる本は絶版とならずに入手できる。
 特に、この本は愛蔵に値すると思われるので、山本氏の本「編集兼発行人」でも紹介した
が、『著者のためには買わずとも読め、書肆のためには読まずとも買えと、むかし斉藤緑雨は
言った。』通り、今読まなくとも老後の愉しみにでも所蔵しておくと好い。
 「いつまでもあると思うな親と金と本」である。
 久世光彦氏の「解説 ―『年を経た鰐の話』」は後に復刻された「年を経た鰐の話」に転載
されている。その「解説 ―『年を経た鰐の話』」に本書を『翁は不貞腐れたふりをして、ある
いは横丁の偏屈爺いの声色を使って、実は、童子の澄んで光る眼で、本の《魂》について
訴えているのである。』とあり、愛情深い解説となっている。
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